コベナンツの活用術

コベナンツの活用術

2013年9月14日

  金融用語でコベナンツ(Covenants:英語)という言葉があります。
  コベナンツとは、契約条項や約款という意味を持ちますが、金融用語としては融資や社債の財務制限事項の意味で用いられることが多く、借り手の財務指標が一定の基準を満たさなくなった場合に貸し手から契約解除による返済を求められたり、金利上昇のペナルティを課されたりするものです。
  一般には銀行団による協調融資や社債など大口の取引で用いられ、貸し手にとってメリットのあるものですが、借り手にとってもコベナンツがあることで担保提供を省略できる場合もあるなど、デメリットばかりとは限りません。
  このようにコベナンツは本来外部との約束事ですが、借り手においてコベナンツの財務指標だけを切り出してうまく経営に採り入れれば、自社の財務規律を保つのに役立つのではと考えます。
  コベナンツで設けられる項目としては、純資産額維持、自己資本比率維持、利益維持、負債額維持、負債比率維持、インタレスト・カバレッジ・レシオの維持、債務償還年数の維持などです。これらのうち、会社の経営計画などで指標となっていないものを採り入れることにより自社の財務体質をより強固にする可能性が生まれます。
  経営計画が利益(やキャッシュフロー)計画に偏っている場合は是非検討してみてはいかがでしょうか。

運転資金の借入と返済原資

2013年8月24日

  運転資金の中でも、狭義の運転資金と呼ばれるものは、売上債権に棚卸資産を加えたものから、仕入債務を差し引いたものです。
  では、この狭義の運転資金を借入によって調達している場合の返済原資は何に求めれば良いのでしょうか。次のようなパターンが想定されます。

①利益
  ・税引後の利益として社内に残った資金。
②売上の減少
  ・回収条件や支払条件、または売上に対する棚卸資産の比率が一定ならば、売上の減少により運転資金も減少します。
③回収条件の短縮
  ・早期の売上回収により得た資金。
  ・これは得意先にとっては支払条件の短縮になり運転資金の増加要因です。
④棚卸資産の圧縮
  ・棚卸資産として留まる期間が短くなるため運転資金は減少します。
⑤支払条件の延長
  ・支払いを先に延ばすことによって得た資金。
  ・借入金を仕入債務で肩代わりするとも言えます。
  ・仕入先にとっては回収条件の延長になり運転資金の増加要因です。
⑥増資
  ・増資によって払い込まれた資金。

  実際にはこれらの組み合わせにより返済原資が生み出されます。これらのうち、②~⑥は常にあるものではないので、①の利益に返済原資を求めることになります。ただし、①の利益には変動があり、投資や配当にも向かうので安定した返済原資とは言えません。
  このために用意されている借入の方法が、分割返済がなく、期日に書き換えを予定した手形貸付等の借入で、その特徴から「ころがし」とか「ベタ」と呼ばれます。
  運転資金の借入としては、この「ころがし」や「ベタ」が理想ですが、現実の借入は分割返済付のため定期的な借り換えが必要となっているケースが多いでしょう。
  ここに、定期的な借り換えを確実にしたい企業側と、定期的な借り換えを約束したくない金融機関側との立場のズレが起きることがよくあります。このズレへの対処には金融機関との日頃のコミュニケーションが欠かせません。

 

適正な借入金

2013年8月17日

  企業の成長や安定にとって外部からの借入金の果たす役割は大きいものです。しかしながら、意外に難しいのが借入金のコントロールです。
  借入条件(返済方法、返済期間、返済額、金利など)が目的に合っていない場合や、時には貸し手である金融機関が示す条件どおり借り入れをしている場合が想定されます。利益から生み出されるキャッシュフローが借入金の返済スピードに追いつかないという現象はそのひとつでしょう。
  このような状況であっても、今ある借入金の返済の進め方や、将来の新たな借り入れのために、適正な借入がどうあるべきかを知っておくことは大切です。
  適正な借入金診断は、経営判断の材料、金融機関とのコミュニケーションツールとしても使え、私どもはお客様のニーズに合わせて提供しています。

法人税減税と貸借対照表

2010年11月3日

 現在政府税調でも話し合われている法人税率の引き下げは、会社にどのような効果をもたらすのでしょうか?

 税率が引き下げられた場合を、貸借対照表から見てみましょう。最近になって明らかになった減価償却制度の見直しなど代替財源に関する項目は考慮していません。

 ここに、ある年度末の貸借対照表があります。 

減税

  この年度に対応する法人税のうち、決算日において支払っていないものは負債の部の「未払法人税等」に計上されます。

 また、税引後の当期純利益は、純資産の部の「利益剰余金」に含まれます。

 法人税率の引き下げが実現した場合、その引き下げにより減った法人税の額が、「未払法人税等」から「利益剰余金」にシフトすると言えます。

 「未払法人税等」の法人税は決算後2ヶ月以内に支払わなければならず、現金が会社から流出します。一方、「利益剰余金」であれば、会社がどのように使うか自由に決められます。貸借対照表からはこんな風に見ることができます。

貸借対照表は勘定式で

2010年10月7日

 日頃、会社の決算書を読む機会はどれくらいありますか?貸借対照表はどんな形をしていますか?ほとんどが次のいずれかでしょう。

               <A>                                   <B>  図版 

 

 

 

 

 

 

 Aは勘定式、Bは報告式と呼ばれます。これらのほかにも2期比較で表されるものもあります。

 これらはそれぞれ長所や理由があって選択されますが、決算書を読む場合には勘定式が優れているでしょう。

 それは、調達としての負債・純資産が右側、運用としての資産が左側で「対照」を成すことで、一目でその会社の状況や特徴がつかめるからです。

 もし、お手もとの貸借対照表が報告式でしたら勘定式も用意して(あるいは会計事務所から入手して)見比べて下さい。

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