江戸時代の美術─「軽み」の誕生
2023年10月28日
丸の内の出光美術館で開かれていた『江戸時代の美術─「軽み」の誕生』に行きました。
展覧会の概要によると、狩野派の地位を盤石にした狩野探幽が後水尾天皇に対して「絵はつまりたるがわろき」と語ったそうで、画面にすべてを書き尽くさず、ゆとりや隙を感じさせるようにすべきというのがその真意とのことです。
このつまらない(詰まり過ぎない)の価値観が現代まで引き継がれてきていることを感じられる展覧会でした。
皇居方面はあちらこちらで再開発が活発な東京の中で変わらない景色の一つです。
すぐ近くで来年秋まで修繕工事をしている三菱一号館美術館に立ち寄ってみました。足場が組まれ覆いがかかっています。その覆いはロートレックのモチーフです。
前庭のバラに癒されます。
三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions
2023年10月24日
しばらく前のこと、千葉市美術館で開かれていた「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions」展に行きました。
ここ数年は、千代田区の丸の内仲通りを中心にアート作品を屋外展示する「丸の内ストリートギャラリー」の展示作品として三沢厚彦氏の彫刻作品(青銅に着色)を見ることがありましたが、今回、その原型となる木造彫刻作品を見ることができました。
クマやゾウ、ヘラジカ、トラといった大型の動物から、ウサギやネコ、リスといった小型の動物まで、樟の彫像に彩色を施した作品が出迎えてくれます。すぐに気づくのは、会場が素材の樟の香りで満ちていることです。記録映像によると、これらは各地の美術館を巡回していて、会場のスペースに合わせていろいろなレイアウトで展示されてきたことがわかります。
作品のモデルは実在の動物にとどまらず、ギリシャ神話のキメラ(キマイラ)の彫刻もあって目を引きます。
イソヒヨドリ(磯鵯)来訪
2023年10月13日
先日、用事があって休日の事務所にいたところ、心地よい鳥の鳴き声が近くから聞こえてきました。
これまでに聞いたことのない声の主を探してブラインドの隙間からそっと見ると、見慣れない鳥が止まっています。
インターネットで調べたところイソヒヨドリの雌で、もともとは磯や岩場に多く生息するらしいのですが、近頃は市街地でも見かけるそうです。
平日だったら美声を聞くことができなかったかもしれませんし、イソヒヨドリという鳥の名を知ることもありませんでした。
美術館の悪ものたち
2023年10月2日
上野の国立西洋美術館で開かれていた「美術館の悪ものたち」展に行きました。
先日ご紹介した「スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた」展と同時期に新館2階の版画素描展示室で開かれていた小企画展です。
会場には当館のコレクションから、制作された時代ごとの「悪ものたち」が登場する作品が選ばれて展示されていました。
作品の制作年は15世紀から20世紀と幅広く、たとえばアルブレヒト・デューラーの『「黙示録」より、4人の騎士』は、デューラーの版画でも代表作のうちの一つとされている貴重なもので、他にも見るべき作品が並んでいました。
スペインのイメージ :版画を通じて写し伝わるすがた
2023年9月28日
上野の国立西洋美術館で開かれていた「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」展に行きました。
西ヨーロッパの中でもエキゾチックとされてきたスペイン。本展はそのスペインのイメージを形づくってきた版画を集めて展示する企画です。
会場では17世紀から20世紀までのスペインにまつわる版画を見ることができ、版画という媒体がイメージの伝播に優れているという特長が良くわかりました。
ゴヤをはじめとする数々の作品は、画集では見ることができても実物を見る機会はなかなかなく、版画を集めた展覧会のありがたみを感じました。